韓国 vs 中国 — 国家債務
公式定義が違えば、比率の意味も変わる。 — 中国の公式政府債務(中央+地方)はGDP比約69%で、韓国D1(約49%)を上回る。ただし中国は地方政府の隠れ債務論争が大きく、韓国もD1/D2/D3の区別が重要で、単純な順位比較は危険だ。
| Country / Series | Debt / GDP | Household / GDP | GDP (T USD) | Debt (T USD) | Note |
|---|---|---|---|---|---|
| Korea (D1) | 48.7% | — | 2.00 | 0.97 | MoEF D1 definition |
| Korea (D2, IMF basis) | 56.5% | — | 2.00 | 1.13 | broader public definition |
| China (official gov debt) | 68.5% | — | 21 | 14 | central + local official debt only |
公式統計が捉えきれない中国の地方債務
中国の公式政府債務は中央と地方を合わせてGDP比58.6%程度である。この数字だけを見れば韓国のD1(45.8%)をやや上回る程度で、国際基準で特に危険な水準ではない。問題は、この統計が中国の地方財政の実態を代表していない点にある。
地方政府融資平台(LGFV)は法的には企業だが、実質的には地方政府のインフラ投資を代行し、その債務を自らの貸借対照表に抱える。政府債務として計上されないまま、返済責任は事実上地方政府に帰属する構造だ。IMFがこれを含めて算出する拡張債務(augmented debt)ベースでは、GDP比は112%程度まで上昇する。同じ国について58.6%と112%という、二倍近い差が併存している。
韓国のD1が低く見える理由
韓国側の数字にも同種の注意が要る。ヘッドラインに使われるD1は中央政府と地方政府の債務のみを含む。非営利公共機関まで含む一般政府債務D2に広げると、45.8%は56.5%に上がる。非営利公共機関を入れるか外すかだけで10%ポイント以上が動く。
さらに非金融公企業を含むD3まで行けば範囲はもっと広がる。韓国は道路・鉄道・住宅・電力といった領域を公企業が担ってきた比重が大きく、公企業債務の扱いは国際比較で特に敏感だ。中国のLGFV論争と性格がまったく違うわけではない。両国とも「政府が直接借りたわけではないが、政府が責任を負う可能性が高い債務」をどこまで数えるかという同じ問いの前に立っている。
借りた資金の行き先が違う
比率が近くても、債務の性格は調達した資金の使途によって分かれる。中国の地方債務の多くは道路・鉄道・産業団地・不動産開発といった資本支出に流れた。資産が残るということだが、その資産が返済に必要なキャッシュフローを生むかどうかは別の問題だ。稼働率の低いインフラは、帳簿上の資産であると同時に維持費を生む負担でもある。
韓国の国家債務増加は、相対的に福祉・移転支出と景気対応の財政により多く結びついている。この支出は資産を残さない代わりに家計所得を直接支える。どちらが優れているとは言えない。ただ返済財源を論じるとき、中国は「その資産は収益を生むのか」を、韓国は「税収基盤はこの支出水準を支え続けられるのか」を問うことになり、問いの形そのものが異なる。
成長率が比率を抑えてきた効果
債務比率は分子である債務と分母であるGDPが共に作る値だ。中国は長らく名目成長率が高く、そのおかげで債務が急速に増えても比率は相対的に緩やかに上がった。分母が大きくなる速度が分子を部分的に相殺してきたのである。
この効果は成長が鈍化した瞬間に消える。債務増加の速度が同じでも名目成長率が半分に落ちれば、比率上昇の速度ははるかに急になる。中国の債務論議で成長率見通しが債務見通しと事実上同じ問題として扱われる理由がここにある。
韓国はすでに低成長局面に入っているため、この緩衝装置が相対的に薄い。同じ規模の財政支出が債務比率に及ぼす影響が、高成長局面より大きいということだ。両国の比率を並べて見るとき、それぞれの名目成長率の前提を併せて確認すべき理由である。
要するに、この表の二つの数字は異なる成長前提の上に立っている。成長率が変われば、債務を一銭も追加で借りなくても比率は動く。
この表を読む順序
第一に、どちらの国が高いかを問う前に、それぞれの数字がどの定義を使っているかを確認する。韓国がD1かD2か、中国が公式基準か拡張基準かによって順位は逆転する。第二に、両国とも「政府の外にあるが政府が責任を負う可能性のある債務」が存在することを前提に読む。
第三に、比率そのものより、その債務が生んだ資産と支出の性格を見る。第四に、リアルタイムで動く本サイトの数字は公式発表の間を外挿した推計値である点を忘れない。正確な時点値が必要なら、各国ページの出典表から原典の発表を確認するほうがよい。
Takeaway
中国を比較に入れると、重要なのは「どちらが高いか」ではなく「どの定義を採用したか」になる。数値より先に定義と出典を読むべきだ。
引用・出典表記ガイド
WorldRealDebt Research Desk. (2026). "韓国 vs 中国 — 国家債務." WorldRealDebt Sovereign Debt Observatory. Retrieved from https://worldrealdebt.com/ja/compare/korea-vs-china-debt/